協力会社との協働は、多くの企業にとって欠かせない戦略です。特に、ビジネスにおいて新たな分野へ挑戦する際、外部の知識やノウハウが不可欠になります。しかし、理想的なパートナーを見つけ、実りある協働関係を築くのは容易ではありません。この記事では、長年の経験をもとに、効果的な協力会社の選び方やプロジェクト進行の際に陥りやすい問題点、そして発注側として意識するべき要点について詳しく解説します。成功する協働を通じて、業務効率化と企業成長を実現するためのヒントをお届けします。
協力会社との成功する協働関係構築:プロジェクトの成功を分ける要素とは?
ビジネスを進めるうえで、すべての課題を自社のメンバーだけで解決するのは難しい場面が多々あります。
特に、新たな領域に挑戦する場合には、発想やノウハウが不足しており、外部の力を借りることが必須となるケースが増えています。私は仕事を通じて、コンサルティング会社、IT関連企業、アウトソーシング会社などと多くの協力関係を築いてきましたが、理想的なパートナーを見つけるのは決して簡単ではありません。
パートナー企業ごとの業務レベルの違いや、担当者との相性などがあり、良い出会いに巡り合うことは稀です。
しかし、理想的な協力関係を築けるパートナーと出会えると、双方の成長を加速させる好循環が生まれます。長期的な信頼関係を構築できるパートナーと協働することで、仕事の質や効率も高まり、より大きな成果が期待できます。
今回は、こうした良好な協力関係を築くためのプロセスと、私が経験してきた事例を元に、成功する協働関係を築くための要点を解説していきたいと思います。
新しい挑戦における外部パートナーの重要性と課題
新しい取り組みを進めるには、従来の知識や経験では足りず、新たなノウハウが必要になります。そのため、外部パートナーとの協働が不可欠です。しかし、業務の特性やスキルセットが異なるパートナーに自社の業務を完全に理解してもらうことは簡単ではありません。
また、協力会社側も限られたコストと時間の中で成果を求められるため、すり合わせの過程で課題が生じることが多く、うまくプロジェクトが進まない原因となることがあります。
以下では、私の体験から、いくつかの具体例を通じてその難しさと解決の工夫について紹介します。
SNS広告代理店との協働経験:得意分野へのフォーカスの重要性
SNS広告の分野では、大手の広告代理店に依頼すると非常に高額になるため、費用対効果を考え、比較的小回りが利く小規模なSNS広告代理店や運用会社との協働を検討しました。
初めはインターネットで一社ずつ評判を確認していましたが、出力のクオリティを事前に見極めるのは難しく、効率が悪いため途中で断念しました。その後、「プロシェアリング」という、大企業とスタートアップ企業をマッチングさせるプラットフォームを利用することにしました。
このプラットフォームには、小規模な会社からフリーランスまで幅広い方々が登録しており、過去の評判や実績が閲覧できるため、信頼性の高いパートナー候補を選定できました。
いくつかの候補企業を紹介され、面談を通じて最適な会社と契約しました。私と面談した方は代表を務めている方で非常に理解力が高く、優秀なのが面談でわかるレベルの方でした。
スタート時点で期待は膨らみ、このSNS広告代理店が「デジタルコミュニケーションが経営課題の解決につながる」という意識を持ちすぎたため、得意でない経営分析もオーダーの一部に入れてしまい、結果として時間がかかってしまいました。また、実務を担うのは部下の方で、面談の時に感じたレベル感は残念でしたが持ち合わせておらず、代表の方の関与も期待を下回っていたことも大きな要因でした。
いずれにしても、私たちも「やってくれたら楽になるかも」という思いがあったために、余計な寄り道を許してしまったのが原因です。
発注側もパートナーが得意とする分野にフォーカスできるような環境を整えることが重要だと学びました。
経理システム刷新プロジェクトでの課題:適切な仲介役の重要性
経理システムの刷新プロジェクトにおいても、外部パートナーとの協働で課題が生じました。
経理システムには複雑な流通処理が求められ、協力会社がシステムの構築に必要なすべての業務を十分に理解できていなかった為、不具合が多発し、最終的に手作業で処理する事態となりました。
要因は実務側が特殊な処理についてヒアリングの際に説明したものの、システム会社側がその内容を仕様に落とし込めていないことが要因で、自社の業務をITスキルに変換して話すことが不足していました。
そこで、以前から付き合いのあるコンサルティング会社を間に入れ、システム理解のある実務コンサルタントをアサインすることで解決に至りました。
こうした基幹システムの構築においては、システムと実務の両方に精通している仲介役の存在が極めて重要であると感じています。発注側が業務内容を完全に把握していることはもちろん大切ですが、それをITスキルに置き換えて説明できる専門家がいることで、スムーズな進行が期待できます。
ここはコスト増の要因ではあるのですが、削らずに必須コストとの認識が必要です。
業務効率化とRPA導入プロジェクト:業務理解のミスマッチ
業務効率化を目指して、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)導入のためにコンサルティング会社を利用したプロジェクトでも、協働における課題が顕在化しました。このプロジェクトでは、まず業務のヒアリングを行い、効率化で生み出せる時間を算出し、必要な業務設計を構築するというオーソドックスなステップを踏みましたが、コンサルティング会社の業務理解の浅さが作業フェーズ以降のプロジェクトの進行を妨げる結果となりました。
コンサルティング会社が業務のフローを書き起こし、RPAやAIの試験的導入と改善案の提案が行われるはずでしたが、外部からの視点であるため、私たちが理解している業務内容に理解が追いつかず、最終的に具体案が出てこない状態となりました。
このケースでは、協力会社には業務の詳細まで理解してもらう努力不足を実感しました。業務理解の浅さがプロジェクトの停滞を招くため、相手に求めるべき理解の深さを明確に定義していくことが今後の課題だと考えています。
発注側としての気づき:説明の習慣化が必要
このような協力会社との協働において、発注側としての役割を再認識することが求められます。
私たちは日常的に業務を行っているため、その内容がどう他部署に影響するかを理解しています。しかし、日常業務で慣れてしまっているため、他者にその内容を正確に説明することに慣れていません。
こうした点が、外部パートナーに理解してもらう際の大きな障壁となりがちです。つい、「なぜこんなことがわからないのか?」と疑問に思ってしまうこともありますが、実際には「説明していないことは理解されない」ことを肝に銘じる必要があります。
日々社内で動いているだけでは、この重要な点を見落としがちです。
ちょっとしたコミュニケーションを大切にする姿勢
協働の成功には近道はありませんが、日常のちょっとしたコミュニケーションが思わぬ気づきをもたらすことが多々あります。
この「小さな気づき」を軽視しないことが、発注者としての重要な姿勢となります。プロジェクトをリモートで進行する際も、情報が伝わらないことは往々にしてあるため、些細なコミュニケーションの機会を設けることが双方にとって大事です。
こうした姿勢は、発注条件としても盛り込むべきであり、この点に積極的でない企業には依頼しないほうが無難だと思います。
成功する協働を築くための3つの要素
成功する協働関係を築くためには、発注側が発揮すべき要素がいくつかあります。以下はその中でも特に重要と考える要素です。
1. 双方の強みを理解し活かす環境作り
協力会社が得意な分野にフォーカスできる環境を作り出すことが、発注側に求められます。例えば、SNS広告代理店との協働では、デジタルコミュニケーションが経営課題の解決に役立つという意識を持たせすぎることが問題を引き起こしました。経営分析など得意でない部分を任せるのではなく、強みに集中できる体制を整えることで、プロジェクトの成功率は格段に高まります。
2. 説明責任とコミュニケーション能力
発注者としての説明責任を果たすことも重要です。協力会社にとっては、社内の業務がどのように機能し、どの部門にどう影響するかが把握しにくいため、発注側がその点を詳しく伝える必要があります。また、特にシステム構築の際には、自社業務を理解しつつ、ITスキルに変換して話せる仲介役を置くことで、認識のズレを防ぎ、プロジェクトのスムーズな進行が期待できます。
3. コストと成果のバランスを見据えた発注判断
成功する協働には、コストと成果のバランスを見極める判断も欠かせません。単に安価であればよいという考えではなく、パートナーと適切な料金で契約し、長期的な視点で協働関係を育むことが発注側の責任です。結果として、信頼関係が深まり、次回以降の業務がスムーズに進むだけでなく、高い精度が求められる案件にも対応しやすくなります。
結論:協働の未来に向けて
大手のコンサルティング会社や広告代理店は、安定したアウトプットを提供する反面、コストが高いため、小規模なプロジェクトには不向きな場合もあります。ビジネスマッチングプラットフォームの利用や、業務理解の深さを重視した発注条件を設定することで、協働の可能性はさらに広がります。最終的には、発注側も成長し、協働を成功へと導く姿勢を持つことがビジネスの成長につながるでしょう。
コメント